初めてのVanguard anniversary week その2

そんな訳で、混乱を極めたニューヨーク旅行の初日は、ダラスの空港近くにある塩素臭いホテルで終わりました。前向きに考えようと思って、いや、ダラスに1泊出来たことも、もしかしたら旅の楽しい副産物なのかもしれない、滅多に出来る事でもないし、実際に僕は生まれて初めてアメリカの電車に乗るという経験が出来た。その他にだって・・・

しかし、キャンセルの振替便が、当初の予定とは違うニューアークの空港に無事着陸し、マンハッタン島に入る頃には、その前向き思考がすべて自己欺瞞であることが判明した。要らなかったな、ダラスの1泊(吉田さん、ごめんなさい。いろいろコメントも頂いたのにも関わらず)。

どうしてもハイになっていく気持ちを抑えようとも思わず、そして時間はあっという間にVillage Vanguard 1st set開始の8:30PMになった。

Vanguard Jazz Orchestraのメンバー何人かと少ない言葉を交わし、そしてステージが始まる。
演奏スタート直前に入ったため、席はかなり埋まっている。ちょうど真ん中くらいの位置に座り、このくらいが音のバランス良く聞こえるよね、その時は本気でそう思っていた。

何曲かの演奏が終わり、リーダーであるJohn Moscaがいつもの通りの軽快なMCを繰り出していると、今日は東京からお客さんが来ていると言い出した。

そして、make me smile jazz orchestraの名前が呼ばれ、僕たちのバンドの紹介をしてくれた。僕は右手をあげてVanguard Jazz Orchestraのバンドメンバー及びその日のお客さん全員からの拍手を一身に受けていた。
どうして僕は今たった一人でその拍手の渦なかにいるのだろう、いまここにみんながいてくれたら良かったのに、としみじみ思った(もちろん隣に駐在で来ているベースの竜ちゃんがいてくれているのだけど、だとしても)。そして、Johnが何を言ってるのか理解しようと努めるが、心が付いていかない。そもそも僕にはJohnの早口の英語がなかなか理解できずにいるのだ。

と、我にかえってもまだ拍手が鳴り止まず、それで気の利いたアメリカンジョークでも言ってみよう、しかし手元にマイクは無い、元々そんなジョークも知らず、左肩からぶら下がっていた左手も付け加え、ただ両手で拍手にこたえてみた頃、自分にとっては異常に長い時間に思えた拍手の波がようやくおさまった。

次に演奏されたskylarkという曲は僕にとっても思い出の深い曲で、Bob Brookmeyerがアレンジした鬼気迫るほどの一体感があるハーモニーに身を委ねていると、自分の心がひとりでに震えている事がわかり、ただ目をつむってみた。苦しい、苦しい、そして嬉しい。分からない。

2nd setに昔後輩だった幹太が来るという知らせが届き、あとで演奏が終わったら、たわいもない話がしたいなと思って、そして実際そうなった。

それがニューヨーク旅行1日め夜の話。(つづく)

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