8th Live パンフレットより Concertmasterによる曲目解説 その1

曲目の解説
普段あまりビッグバンドを聞かない方もいらっしゃると思いますので、曲の解説を書きました。興味を持っていただけたら幸いです。

1st set
all of me
元々は Gerald MarksとSeymour Simons によって 1931年に書かれたポピュラーソングですが、非常に多くのジャズミュージシャンによって取り上げられ、最も有名なジャズスタンダードの一つと言える曲となっています。


今回のアレンジは、 Thad Jonesによるもので、Thadらしい斬新で楽しい仕掛けに満ちています。
このビッグバンドアレンジをサラッと聞いただけでは、これは本当に all of me?と疑いたくもなりますが、 vocalの入った元曲を聴けば、テーマが丁寧に組み込まれているのが分かると思います。
トロンボーンセクションが、4分音符を刻んでいく中盤のアレンジは、 Thad Jonesお得意のものでもあり、時に聞こえるバストロンボーンの”引っ掛け”が耳に心地よいですね。

backbone
こちらは、 Thad Jonesのオリジナルナンバー。
ブルース基調の軽快な曲で、Thad=Melの代表曲といえます。Thad=Melの初期に作られた曲ですが、その後を引き継ぐ Vanguard Jazz Orchestraのライブでも頻繁に取り上げられ、実に半世紀ほど演奏され続けています。
中盤に出てくる sax soliも軽快な調子、皆様ぜひ手拍子を拝借いたしたく存じます。

quietude
同じく、 Thad Jonesによるオリジナルナンバー。こちらは、ミディアムテンポの愛らしい小品です。
タイトルの、quietudeとは、日本語に訳すると「静けさ」。静けさという曲のタイトルとは、なんて素敵なのでしょう。どんな曲なのか、気になりますよね。
冒頭から奏でられるテーマは、トランペットによるもの。そっけないような、それでいて印象に残るような。

そしてそのテーマに、サックス5本が寄り添います。この組み合わせはあまり聞いたことのないもので、Thad Jonesのアレンジャーとしての気概が伺えます。
サックスの添えるハーモニーが、タイトルから想像するよりも若干エグみを醸しだしている所も心地よく、エグみのある和音による緊張感が、逆に静けさを増す効果を出し、一種の清涼感というのでしょうか、
聞いていてスッとするのがお分かりになるでしょう。

ピアノが主役の一人であり、本当の「静けさ」を体現する役割を担います。さしてさらに、このピアノソロの後で、今度は全員のTuttiが入ってきた時に、皆様はピアノソロを堪能した事を悟るに違いありません。本当に素敵な曲です。
(他にもいいところは沢山あって、ベルトーンのように重なるところとか、テーマの裏のオブリガードとかも。)

kids are pretty people
引き続いて Thad Jonesのバラードナンバー。
テーマは、まずテナーサックス2本のユニゾンにより奏でられます。
Thad Jonesのアレンジで、サックスセクション5本による sax soliは思い浮かぶものが沢山ありますが、
テナー2本というのは珍しいのではないかと思います。
この後、テーマはサックスセクション全体へと引き継がれ、曲が展開していきます。

トロンボーンとベースのデュオが緊張感のあるソロスペースを作っています。
テンポが倍になったり元に戻ったりと、バラードで始まるものの、様々な表情を見せる展開をお楽しみください。

samba con getchu
サンバの曲です。 Bob Brookmeyerによるアレンジです。
Bob Brookmeyerといえば、このバンドのタイトル由来となっている make me smileの作曲家/ アレンジャーでもあります。
彼のアレンジは、アイデア溢れるものばかりで、メロディ、奇抜だけれども癖になるハーモニー、さらにハーモニーなのにアドリブで吹く指定があったり、時に難解とも取られがちな物もありますが、オリジナリティという意味では飛び抜けたものがあります。
今回演奏する samba con getchuは、Bob Brookmeyer 作品の中では、聴きやすい部類に入るのではないかと思います。
とはいえ、様々な仕掛けに満ちており、サンバの中に繰り広げられる Brookmeyer印を見つけてみるのも面白いですよ。

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